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車社会の面々

 

 去る6/29、国交省主催の自動車安全シンポジウムというものに出席した。

サブタイトルは交通事故のない社会を目指した今後の車両安全対策のあり方についてということで、車両側からの交通事故対策という趣旨、つまりメーカー技術者のためのシンポジウムだ。自分は単なる興味本位だったが別に問題はないということで様子を見に行った。いわゆる産官学の雰囲気というものに少し興味があったのである。

 

いわゆるパネリストは、東大の人間工学の教授、JAFの幹部、モータージャーナリスト、日本自動車工業会(メーカー団体)名大の機械工学の教授、そして国交省自動車局幹部。

最初に道路交通の現状の説明があった。

興味深いものとしては

・地方を中心に公共交通が衰退し、自家用車の利用率が高い

・人口減少局面にあっても乗用車の保有台数はまだ増加している。

・歩行者の死者数の減少幅が小さくなっている

・諸外国に比べて歩行中と自転車乗車中の死者の割合が高い(計51.4%)

・H27年度に交通事故死者数が15円ぶりに増加

 

ここまでのデータ的な中身は勉強になった。特に歩行者と自転車の犠牲について言及がしっかりされていたのは有意義であった。

 

しかしここからの議論が車目線を露呈しまくった。特にひどかったのがモータージャーナリストの岩貞るみこ氏だった。ここまでの講演の流れとして歩行者にも有益な自動ブレーキや衝突回避の話で来ていたのに、氏が話し出したのは、

「子供を守りたい。しかし現実的に車両の技術での対応は限界がある。警察は歩行者と自転車にルールを守らせるべきだ」

いったい何なんだという感じだ。ものすごい矛盾じゃないか。その歩行者と自転車に子供も含まれるのだ。警察のアイコンタクトと同じだ。子供にルールを守らせると言う暴論。無邪気で自由な幼子にルールを守らせるなど無理に決まっているではないか。少なくとも自動運転や数々の安全装置の開発は子供だけでなく、人間が完璧でない存在であるということが前提にあってやっていることであろう。そしてこのシンポジウムはそう言った開発者のためのシンポジウムのはずだ。それなのにルールを守らせろとはこの人はいったいここへ何をしに来たのだろうと思うし、とんでもない車目線である。

 

そのほかにも、母親たちはなぜチャイルドシートをさせないんだとか、さらには軽やコンパクトカーがパッケージ優先で安全なドライビングポジションが取れなくなってるとか。はっきりいったどうでもいい話だ。車に乗ってない人間の死者が多いという話があったあとでこういう話になるのが理解できない。ドライビングポジションなどブレーキとハンドルにとりあえず届いていればいいではないか。ちょっと運転しにくい方がスピードを出すのも億劫になるだろう。少なくとも遵法運転をするのであればそれほど操作に神経質になる必要はないはずだ。なにせ法の通りに走ればスピードが遅いからだ。それにチャイルドシートをしていれば死を免れるなどというのは勘違いもいいところだ。トラックに前後を挟まれて潰されたらチャイルドシートごとミンチになってしまう。そもそもの自動車システム自体が危険であるのにシートベルトやチャイルドシートの議論がここで必要なのか。この岩貞という人だけでなく、自動車評論家という連中の意識の低さには以前からうんざりだったが、車目線(当たり前か)であまりに軽薄な話には心底不愉快な気分になった。

 

車目線で不愉快といえば、自動車工業会の人が、

「道交法では夜間は他の車両等と行き違う又は直後を侵攻する場合を除き走行ビーム(=ハイビーム)をつけなければならないとされている」と発言し、また配られた資料に記してあったことだ。

私は以前から、ハイビームの積極活用の呼びかけに憤りを感じてきた。夜間に歩行者がはねられるのは暗くて歩行者が見えにくいと言う理由だろうが、これはまさに車目線であり、車利用者の横暴である。

暗くて見えないなら、確認できるスピードで走ればいいだけである。見えなければ止まる。走らない。それだけだ。

小生法律は素人なので、弁護士ドットコムで専門家の意見を聞いてみた。その結果、

国土交通省令に「道路運送車両の保安基準」というものがあり、その32条で、走行用前照灯とすれ違いよう前照灯が規定されている。

 

道交法第52条第1項

「車両等は、夜間(日没時から日出時までの時間をいう。以下この条及び第六十三条の九第二項において同じ。)、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない。政令で定める場合においては、夜間以外の時間にあつても、同様とする。」

道交法第52条第2項

 「車両等が、夜間(前項後段の場合を含む。)、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない。

 

つまり、1項の前照灯=ハイビームで、2項の光度を減ずる等灯火を操作しなければならないと言うのがロービームであるから、ハイビームが基本であると解釈できると言うことだ。なんだ法律でもハイビームが基本ってことになってるのかとがっかりしたら、まだ答えの続きがあった。

 

道交法第70条

「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」

 

歩行者が幻惑して前が見えないような様子でハイビームにするのは不適切であるとの回答だった。

以上のことから、ハイビームが基本であると法的に義務づけられているというのは無理がある。

このように法律を都合のいいように解釈してプロジェクトを推し進めようとするのは昨年の戦争法制定の過程でも見られたが、実際に似たようなことが小規模であれ、身近で目の当たりにするとは思いもしなかった。やはり企業や役所が一緒になって何かやろうとする時、疑ってかかることが大事だと思い知らされた。それが解っただけでも収穫とすべきか。